【環境問題の闇】#27 ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄 1960年代～2020年代

ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄 - 1960年代～2020年代
冷戦時代、1960年代後半から1980年代後半にかけて、ロシア（当時のソ連）は北極圏のバレンツ海やカラ海に約18000個の放射性廃棄物を投棄しました。その中には原子力潜水艦や原子炉も含まれ、これが周辺海域の生態系に深刻な影響を及ぼしました。当時の廃棄物管理の不足が原因で、環境保護の意識は極めて低いものでした。
1993年、ウラジオストク沖で約900トンの液体および固体の放射性廃棄物が投棄されていたことが発覚しました。この問題を受け、国際社会は海洋法条約を基にロシア政府に改善要求を行い、同年以降、意図的な海洋投棄は停止されました。しかし、過去に投棄された廃棄物がもたらす環境への影響は長期的に続いています。
2000年代には、国際原子力機関とロシア政府の協力により、北極圏の廃棄物モニタリングが始まりました。サンクトペテルブルクには新しい放射性廃棄物貯蔵施設が建設され、地上処分への移行が進められました。一方で、海洋に残された廃棄物からの放射性物質の拡散が懸念され、周辺諸国はモニタリング体制の強化を求めました。
2010年代には、地層処分を前提とした技術試験や、北極圏での廃棄物引き上げプロジェクトが進展しました。特に、投棄された原子炉や核燃料の回収が進められた一方で、北極海の氷が減少し、廃棄物の影響範囲が拡大するリスクが指摘されました。このため、環境影響評価がより一層重要視されました。
2020年代においても、過去の廃棄物が海洋生態系や人間の健康に及ぼす影響についての研究と監視が続けられています。また、国際的な放射性廃棄物管理規範の強化が求められ、福島第一原発の汚染水放出計画により、さらなる議論が喚起されました。
ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄は、冷戦時代から続く環境問題として現在も国際社会の注目を集めています。これ以上の環境被害を防ぐため、適切な廃棄物管理と国際的な協力が引き続き求められています。
情報源
1. 国際原子力機関「海洋環境影響評価」
2. グリーンピース「北極海での核廃棄物投棄」
3. 国連海洋法条約公式文書
4. ロスアトム公式声明
5. 北極会議議事録
6. 科学誌記事「北極における放射性廃棄物管理」